F29見え方予想用に作成した、KMLファイルがありますので、
必要な方は、
こちらから落としてご利用ください。
高度はプロパティの高度設定から復元することができます(たぶん)。
落とし方は過去の記事を参照してください。
記事はここから>>>
さて、ようやく帰ってまいりました。
昨日コメントいただいたように、どうやら関東(太平洋の各地)でロケット打ち上げの雲と思われる夜光雲が撮影されたようです。
確かに、打ち上げ時間が16時になり、関東では日も落ちる時間、夜光雲が見えてもおかしくありません。
(下でひまわりを元に分析してみました)
私は、現地にいたためそういった雲を撮ることはできませんでしたが、
もしチャンスがあれば撮りたいところです。
※もしかすると雲までの距離は関東でも種子島でも同じであるため、
種子島からでもこの夜光雲は見えた可能性はあります。
ただ、打ち上げが終わればまずは片付けて宿へまっしぐらであるため、
そこまでは誰も気がつかなかったという感じでしょう。
ちょっと空を見上げてみれば良かったです。
■ひまわりからロケット雲が見えるのか?
さて、視点を変えて、宇宙からロケット雲が見えるのかを検証してみたいと思います。
昨年10月に打ち上げられ、
今年7月から運用を開始されたひまわり8のすごい機能として、
2.5分毎に撮影できるという能力があります。
ロケット打ち上げで雲が出るのは、基本的にブースター切り離しのおよそ3分ほど、
これまで30分毎の観測では0分か30分ピッタリに打ち上げがあれば
(実際にはスキャンに時間がかかるためちょうどではありませんが)
写っているかもしれませんでしたが、
そういった打ち上げはほとんどありませんので、ほぼ無理でした(と考えてよいと思う)。
それに分解能も悪いので、それがロケットであるか判別はしにくいと思います。
※古い衛星でも飛行機雲が希に写ることがあるようですが、だいぶ広がりが出たものと考えられる。
最新のひまわりは2.5分毎に日本付近を撮影しているため、
このブースター切り離しまでの3分が広がらないうちに撮影できれば、
もしかすると線のように写ってもおかしくはありません。飛行機雲も写ることがあるのですし。
しかも解像度も上がっているので、やはり写っている可能性は高いと思われます。
ということで、ひまわりの写真を解析してみることにしました。
さすがに、データ量が半端ないため気象庁では3時間以上前のデータは入手できませんが、
NICTのサイエンスクラウドに、ひまわりのアーカイブがあるので、
こちらからデータを入手することにしてみました。
データのダウンロードは
非営利目的や研究目的であれば誰でもダウンロードできるようになっています。
今回はロケット雲が写るのか?というテーマで利用する(研究目的)のでたぶん問題ない(?)でしょう。
サイトでは1日前のデータから入手できるので、
24時間経った今日であれば、昨日の打ち上げ時間帯をダウンロードすることが可能です。
早速ダウンロードして、種子島付近を解析してみると・・・
と、その前に、
まずひまわり画像を種子島付近で切り取っており、位置関係は下の図のようになります。
アニメでは線で雲が隠れてしまうので、マーカーしていません。
宇宙センターは赤線の交点付近になります。
15:45:00〜16:17:30の14枚をアニメにしてみました。
入手画像は可視画像であるため、夕暮れ時で真っ黒(地球の影)なので、レベル補正をしています。
では雲画像を見てみましょう。
!!!?
おお!ロケット雲っぽいものが写っています。
ちょうど3枚目が打ち上げ時間の15:50分画像ですので、間違いなくロケット雲です。
ロケット雲を分かりやすくマーカーを入れて見ました。
追っていくと、16:07:30ころには衛星画像からは見えなくなってしまいました。
■打ち上げ方向が91度なのに、なぜひまわり画像は北東を向いているのか?
ところで、お気づきと思いますが、今回のF29は91度方向(東)に打ち上げられました。
ですが、ひまわりの写真を見ると北東方向に打ち上げられたかのように見えます。
これは、ひまわりの位置とロケットの位置関係をみればよく分かります。
おなじみGoogle EarthにF29の軌道を載せてみましょう。
ひまわり8(140.7度 高度36000km)から見た地球です。
オレンジが実際の軌道、黄色が地上に落としたときの軌道になります。
普通に考えると黄色の部分に雲ができそうですが、
見て分かるとおり、オレンジの軌道が北東に向かって描かれています。
これはひまわりがロケットを斜め横から見ているためです。
もう一度打ち上げ直後、15:50のひまわり画像を見ると、だいたい同じような感じに
雲が伸びていることがわかります。
さて、話題を最初の夜光雲に戻してみましょう。
■移動距離をひまわりから検討する
衛星では見えなくなっていますが(おそらく散り散りになって衛星の解像度では写せないくらい薄くなったなどとかで)
消えないまま移動していったと仮定して位置を推定すると、
15分後が種子島沖50kmくらい(だいたい種子島の南北は50〜60kmなので)
30分後が宮崎南東沖合、1時間後で足摺岬沖、およそ17:30頃で室戸岬沖
紀伊半島沖と移動していくと推定されます。
ひまわりの図に落としてみるとだいたいこのような感じです。
赤線(およびピンク線)の長さが打ち上げから15分後に雲が見えなくなった距離でおよそ50〜60km
そのままその方向に流されたとして6倍に延ばすと、17:30だいたい室戸岬沖100kmに雲が流れたと推定できます。
ネットを見て回ると撮影時間が17:30ころで、
愛知県〜神奈川県で撮影されている方の撮影方向が南西のようなので、
だいたい1時間後の室戸岬沖
紀伊半島沖の方角と一致していると考えられます。
■方向を軌道計算から推定する
次に軌道計算から見て見ると、
例えば、東京から打ち上げを見た図を描くとこんな感じになります。
ブースターの燃焼は赤い線になります。
これを見ても分かるように、東京から見ると種子島はだいたい南西からやや西の方角に位置しており、
先ほどの様に雲はゆっくりと流れているため、相対的な位置関係から左方向、
つまり南西側に何かしら見えてもおかしくないと考えられます。
■推定位置での夜光雲の仰角を推定する
念のため
富士山のような高度が無いとブースターの燃焼部分は東京からでは見えない
つまり、打ち上げ直後ではロケット雲は見えないですが、
これまで書いたように雲はおそらく東へ流されているので、だんだんと見えてきて、
1時間後にちょうどいい位置に見えてもおかしくはありません。
例えば、室戸岬沖100km南海上
紀伊半島沖200km南海上、高度50〜100kmに雲があったと仮定し、
昔作った
ロケット計算機で東京からどの仰角に見えるかたたいてみると、
南西方向およそ仰角2〜7度くらいに雲が見えると計算されます。
※2度はだいたい親指の両端、7度は握り拳を横にしたくらい+αになります。
写真の仰角がどれほどかはよく分かりませんが、
だいたいこのくらいの位置に見えたのではないかと推測されます。
■推定位置での夜光雲の広がり(視野角)を推定する
続いて縦方向の次は横方向についてですが、
15分後のひまわりの映像を解析すると、ロケット雲はだいたい北西から南東方向に広がり、
その距離がおおよそ種子島の南北の長さくらいと同じくらいになっています。
先ほども書きましたが、種子島はだいたい南北50〜60kmくらいです。
15分後からさらに1時間後にもう少し広がりが出て、例えば100kmとか広がったと仮定して、
関東から室戸岬沖
紀伊半島沖(距離にして630km)の水平方向100kmをザックリ計算すると、
水平に10度の広がりで見えると計算できます。
■Google Earthで描いてみる
ここまでのデータを使っていつものGoogle先生にお世話になって描画してみると
こんな感じに描けました。
室戸岬沖南100km
紀伊半島沖南に200km、
水平100kmの広がりを示す赤線、上が100km、下が50km
あと富士山のシルエットが描画されなかったので、5合目当たりの両サイドを緑線で入れておきました。
なんとなく、ネット上で投稿されている感じに似ております。
■形状はロケット雲か
それと、形状ですが、写真をいろいろ見た感じ、
とぐろを巻いた感じがロケット雲に似たような形である、
光の当たり具合から水平方向ではなく上下方向に伸びた雲であると考えられるので、
(もし水平方向なら飛行機雲だが、ロケット雲は垂直にできる雲なので)
ロケットによる雲であることは間違いないと考えられます。
種子島側(宇宙ヶ丘)から見た打ち上げ直後の写真を切り出してみました。
区別するためにロケット雲を示す線(右側)をいれてみました。
ひまわりから見たロケット雲と似たような広がりで流れている様子がわかります。
また、5分後の写真を見ると、各地で撮影された雲のモヤモヤ感がだいたい同じような形状をしていることがわかります。
打ち上げ直後
ほぼ真っ直ぐ伸びていく(横から見ると放物線のように描いている) |
|
打ち上げ3分くらい
雲に隠れて見えないが、
下層では南方向、上層では北東方向へ流されている |
|
打ち上げ5分くらい
さらに流されていく様子がみえる。 |
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■夜光雲の正体はロケット雲か?
以上から推定される夜光雲の位置は室戸岬沖100km、上空50〜100kmで、
形状などからみても、ロケッこ的に各地で撮影された夜光雲の正体はF29のロケット雲と言ってほぼ間違いは無いと思います。
(あくまで個人的な見解です)
■写真を検証してみる
さて、
こちらの方のブログ写真をお借りできましたので、
ここまでの推定位置を入れて検証してみたいと思います。
観測は愛知県からで、射手座が目印となっております。
この時間(17:20〜30)射手座はおよそ南西で、
仰角10〜15度くらい、水平の幅は15度くらいとなります。
雲は射手座の下でだいたい5〜12度くらいに位置しております。
ロケット計算機で計算すると愛知県からは5〜10度くらいに見えると計算でき、
また、水平は推定位置までの距離が400kmなので、計算すると約15度とだいたい合っています。
参考URL
見えたH2A 29号機のロケット雲!? 空からの贈りもの
別の方の写真をお借りして、検証してみました。
こちらの方の写真は富士山が目印となっております。
撮影は埼玉県からで、富士山の仰角は1.6度
これまでの推定位置を計算すると50kmが1.6度で、100kmが6度と計算されます。
写真を確認すると雲の下は3度くらい、上は6〜7度くらいではないかと推測されます。
これまでの位置より若干近めの位置、室戸岬〜紀伊半島付近くらいにあった、
または、50kmより高い位置にあった可能性が考えられます。
水平方向では、右端は富士山の真上に位置しており、
これまで室戸岬100kmくらいと推定していましたが、もうちょっと陸に近いところにあったと考えられます。
また、富士山から南側へ長く連なっているのが確認でき、
広がりも100kmより広いと考えられ(200kmくらい?)、雲が広範囲に流されているようです。
また、2分ほど後に撮影された写真もいただき、確認したところ、
かなり早い速度で西から東へ流れていく様子もわかりました。
相対的な速度は難しいところですが、ひまわりの映像の速さから大まかに計算すると、
150〜180km/h、分速なら2〜3kmで、いただいた写真もだいたいそのくらいの移動量と考えて良さそうです。
参考URL
日が暮れても白く光る雲なので夜光雲か真珠母貝雲かと思ったのだがこんなところで見えるはずがない
写真からもうちょっと分析して、再現してみました↓
続 夜光雲〜Google Earthでザックリ再現してみた
■なぜ打ち上げ直後では無く1〜2時間も経ってから発見されたのか
さて、知人から2時間以上も経って気がついたのはなぜかという質問がありました、
これについては、
日没の16:30頃ではまだ明るく気がつきにくいですが、
1時間後の17:30であればちょうど周りが良い感じに暗くなり、
話が少し横になりますが、日没15分くらいに西の空を見ると低い雲は黒い雲(地球の影で)なのに、
高いところにある飛行機雲だけオレンジ色に照らされているのと同じような感じで、
1時間経っても超高層ではまだまだ太陽光に照らされているので、よりハッキリと確認しやすくなった。
さらに帰宅時間とも重なって目に付きやすい。
上に書いたように、最初は見えなかったが、流れてくることによって仰角が上がり見え始めた。
といった感じで観測時間に時差が生じたと考えられます。
本当に偶然と言ってもいいくらい、
時間的(日没)にも、上空大気の流れる速さ的にも
観測にちょうどいい時間だったと考えられますね。
このくらいの季節で夕方に打ち上げられるとこういった現象が見られるので、
打ち上げ直後から観測しているともっといろいろなことが分かったかもしれません。
そういえば、ひまわり6(H-IIA F7)の打ち上げも夕方にズレ、
小笠原でその光を目撃したという話を小笠原へ言ったときに伺いましたので、
日没近い打ち上げはいろいろと面白い現象が見られるので、
さすがに流れていく雲は軌道とは関係ないところを漂いますので難しいですが、
軌道から夜光雲を推定するために
軌道計算機を使うという手もありますので、
夕暮れに近い打ち上げの時はそういった情報も流していきたいと思いました。
ということで、私は夜光雲は撮影できませんでしたが、
ロケット雲は宇宙からでも見えることが確認できたので満足です。
参考URL
見えたH2A 29号機のロケット雲!? 空からの贈りもの
日が暮れても白く光る雲なので夜光雲か真珠母貝雲かと思ったのだがこんなところで見えるはずがない
ブログの管理者さま、写真、情報提供ありがとうございました。
この場をかりてお礼申し上げます。
修正151126
半分寝ながら書いていたので、
各地の写真を考慮に入れて推定位置を手直ししました。
追記151201
各地の情報を元に、再現してみました。
続 夜光雲〜Google Earthでザックリ再現してみた